部分矯正で治るか

このような場合で部分矯正を考えてみましょう。

明らかに左側（向かって右側）の歯は窮屈そうに並びガタついているのが分かります。例えば「左だけ治してほしい。」このように尋ねられた場合、『治す』というのはどのように治すということか必ず患者さまと共有します。治す＝矯正治療のゴールであるため、患者様とゴールが異なることは避けたいためです。この「治す」が完全なきれいな状態に並べるという意味であれば部分矯正の範囲を超えてしまうでしょう。なぜなら、矯正治療は歯を動かす治療であり、歯を動かすためには動かすための固定源が必要だからです。どういう意味かというと、歯はひとりでに歯茎の中を歩いて動いてくれません。何かに押される、もしくは引っ張られることによって動くため、歯の綱引きや手押し相撲と考えてください。左の歯を押すもしくは引っ張るためには押すための固定源となる歯が必要なのです。左の歯を押すには右の歯を固定源として左の歯に力をかけていくのです。そのために左だけに矯正の装置がつかず、右にも装置を付けるのです。そうして結局すべての歯に装置をつけるために部分矯正ではなく全体の矯正になることがあります。

これは左の上下の歯の治療だから全体の矯正になるのではありません。同じ方で、もし左下だけきれいに治したいとした場合下だけの部分矯正ができそうですが、そうではありません。上は触らなくていいから下だけ治してと思う方も多いでしょう。実は筆者も患者だったころそう思いました。しかし、下だけきれいな歯並びになった場合上はそのままということになります。

歯の役割は食べ物を咀嚼すること。咀嚼するには上下の歯をかみ合わせて食べ物を磨り潰す必要があります。下だけ治したらどうでしょう。噛めないのです。噛めなくなってもいいから下の歯だけ治したい場合ならオススメは絶対にしませんが可能か不可能かであれば可能です。ただ矯正治療は美容ではなく健康のための医療になります。噛めない＝健康を害してしまうため全体矯正をこの場合には行ってください。

 

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